仕事柄、様々な中小企業経営者や若手社員の方々の本音を聞くことが多々あります。
若手の方からすれば、「経営陣や上司の存在は嫌なもの」と感じることが多いようですが、上司は、
- どうしたらみんながより働きやすくなるか。
- もっと意欲的に仕事ができる様になるにはどうしたらいいのか。
- 従業員との距離を縮めるにはどうしたらいいのか。
まだまだ、考えるべきことはたくさんありますが、上記の様なことも考えています。
先日も、ある会社の幹部の方(山本さん)からこんな質問をいただきました。
私は、最近、小さな会社ですが、若手従業員を管理する立場になりました。特別な能力があるわけでもありませんから、若手従業員とどう接し、どの様に人間関係を構築すればいいのか、日々悩んでいます。生意気を言う様ですが、私の経験で「こういう上司だけにはなりたくない」というものがあるので、その点だけには注意していますが、信頼される上司になるには、どんな努力をしたらいいのか、わからない状態です。具体的に今日からできることが知りたいです。
私もこれまで、何度も山本さんと同じ様な悩みに直面したために、この気持ちはよく分かります。
私の場合は、不安が大きく、藁をもすがる思いで、コンサルティング会社に相談をしたことがありますが、今、振り返ってみると、その様なサービスを利用する前に自分で整えられることはたくさんあったなぁと思います。
何ができるかというと、
- 大失敗をしたとしても責任をとる覚悟があるか、自分に問う。
- 真実・理念と異なることは、圧力などに関係なく戦える準備ができているか確かめる。
少し、過激な表現ですが、若手の方々、また私の経験からこの2点はとても重要です。
これらについて、詳しく解説します。
大失敗をしたとしても本当に自分が責任をとる覚悟があるか?
部下が大失敗をしてしまった時に、「上司が責任をとるのが当たり前」という感覚が多くの人にあると思います。
これは、会社の制度上のことであって、現実には、そうとは限りません。

何かあれば、責任は私が全部とる。
だから、何をすればいいのか、しっかりと自分で考えて行動したらいい。
この様なことを言われて、自分なりに一生懸命考えて行動するのですが、結果が良くなければ、

報連相があれだけ大事って言ったやろ!
勝手なことをするな!
どう責任をとるつもりなんだ!
この様なことになってしまうことは多々あります。
これでは、どんなに普段いい人であっても、部下から信頼されることはありません。
実は、この様な現象は、会社だけではなく、親子の関係でもよく見られます。
誰もが経験したことのある親子関係を良くみると、解決の糸口が見えてきます。

あなたの進路は自分で決めたらいいよ。
お母さんは、いつもあなたを応援しているから。
自分の人生は、自分で決めるのが一番よ。

お母さん、私、大学に行くのを辞めて、絵の専門学校に行こうと思うの。
何をしている時よりも、やっぱり絵を描いている時が楽しいから。

何を言っているの!!
あんたね、絵を描いて食べていける人なんてほんの一握りだけ。
ちゃんと勉強して、大学くらいいきなさいよ!!
きっと、この様なやりとりは、あなた自身が経験したり、とても身近な所で聞いたことがあるはずです。
私も実際に、この様なことがきっかけで、親子関係が悪くなってしまったという事例をいくつも見てきました。
では、この時、お母さんはどの様に言えば良かったのでしょうか。
だけど、人生どこで転機がやってくるか分からないわ。専門学校に通ったけれども、「やっぱり大学に行きたい」となった時でも、なんとかできる様に、お母さんも仕事を頑張る。早めに退職できたらいいなぁ…って思ってたけれど、まだまだ先になりそうね。
この方が、圧倒的な信頼が得られます。
ただ、この言葉をサラッというには、お母さんも相当な覚悟を日頃から決めていないと言えないということです。
あなたが信頼される上司を目指すのであれば、
ということになります。
真実・理念と異なることは、圧力に関係なく戦える準備ができているか
部下は、上司のあらゆる部分を見ています。
一般的な人が政治家に対して厳しい意見を言うのと似た様なニュアンスだと理解すると分かりやすいと思います。
2021年に行われた衆議院選挙で、日本維新の会が大きく議席数を伸ばしたのは、簡単に言えば、
だと言われています。
この縮図が中小企業内にもあるということです。
一般的な人は、生活の糧を得るために仕事をしています。
そのため、やはり心のどこかでは、上司に嫌われたくない・経営者には逆らわない方がいいだろう…といった気持ちがあるのも事実です。
そのため、「どう考えても納得できないなぁ」と思うことがあっても、意見を述べたり、質問をすることさえ我慢して、仕事をしているのが現状です。
そんな中で、

何か問題があれば、上司である私が全て責任をとるって言ったじゃないですか。
報連相が大事というのであれば、仕事の結果に関係なく、常日頃から、「報連相は?」と声を掛けるべきではないですか。
失敗した時だけ、「報連相ができていない」なんていうのは、一貫性がないと思います。
こうした考えをきっちりと言える上司は、部下から大きな信頼を得ることができます。
その代わりに、さらにその上の上司には、嫌な存在だと思われるリスクもあります。
それでも、自分の信念を貫く勇気と準備ができているか?ということを自分自身に問う必要があります。
アンパンマンの作者、やなせたかし氏は信念を貫き通した
「ビジネスで何か参考にしたいなぁ」と思った時に、大抵は、ビジネスの業界から参考事例を探そうとすることが多々あります。
けれども、全く違う業界にもたくさんビジネスのヒントとなるものはあります。
日本の中で知らない人はいないと思われる「アンパンマン」ですが、作品が描かれた当初は、「誰かを助けるために、自分の頭をちぎって食べさせてあげる」という行為に批判が殺到しました。
見方によっては、とても残酷にも見えるし、自己犠牲が素晴らしいことの様にも見えるためです。
けれども、やなせたかし氏は、誰かを救うには、時には権力と戦わないといけないこともあるし、自分が傷つくことだってあるということも作品の中で表現したいという信念があったのです。
ですから、どれだけ批判を浴びても、そのスタイルを変えることなく、作品を描き続けました。
その結果が現在です。
やなせたかし氏の覚悟と信念で、日本中が動いたと言っても過言ではない気がします。
最後までお読みいただきありがとうございます。
あなたの信念とちょっとした勇気は、必ず社内に伝わる日がくると信じています。